不登校の定義

「不登校」とは文字通り「登校していない」という意味ですが、そうは言ってもそれは何日登校していないことを指すのでしょうか?また、不登校には様々な理由がありますがどの理由が不登校として扱われるのでしょうか?

<文部科学省ではどう定義している?>

文部科学省所轄の国立教育政策研究所の資料では不登校の定義について以下のように説明しています。

何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)をいう。

なお、不登校については、学校基本調査において、年度内に30日以上欠席した児童生徒を長期欠席者として、その欠席理由を「病気」「経済的理由」「学校ぎらい」「その他」に区分して調査していたが、その後「不登校」という用語が一般的に使用されるようになり、平成10年度 から、上記区分のうち「学校ぎらい」を「不登校」に名称変更した。

(引用:第3章 不登校 – 国立教育政策研究所

平成9年度までは不登校は「学校ぎらい」に区分されていましたが、平成10年度以降「不登校」として区分されるようになりました。

ポイントとしては次の通りになります。

「不登校」の定義のポイント

  • 心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因
  • 背景による欠席
  • 病気や経済的な理由を除外・年度内に30日以上欠席

<近年の不登校の状況>

文部科学省の資料から、平成30年~令和2年の不登校の状況についてご紹介します。

【小・中学校における不登校の状況について】

  不登校児童生徒数 1,000人当たりの不登校児童生徒数
令和2年 196,127人 20.5人
令和元年 181,272人 18.8人
平成30年 164,528人 16.9人

【高等学校における不登校の状況について】

  不登校生徒数 1,000人当たりの不登校生徒数
令和2年 43,051人 13.9人
令和元年 50,100人 15.8人
平成30年 52,723人 16.3人

(参考資料:文部科学省 令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要)

令和2年度の小・中学校の不登校児童生徒数は過去最多を記録しました。不登校の期間が90日以上と長期に及ぶ子どもは54.9%を占めています。

高等学校では同年度の不登校生徒数は減ってはいますが、不登校の期間が90日以上の子どもは19.6%で、前年の19.0%から微増しています。

また、令和2年度は新たに「新型コロナウイルス感染回避」という区分が設けられました。「新型コロナウイルス感染回避」により30日以上欠席した児童生徒数は小学校、中学校、高等学校を合わせて30,287人でした。

新型コロナウイルス感染症は生活様式にも大きな変化をもたらしましたが、それが今後さらに子どもたちの登校状況にも影響を及ぼすことが予想されます。

<不登校のきっかけから見えてくるもの>

文部科学省による不登校の定義には「心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景による」とありましたが、実際にはどのようなケースがあるのでしょうか?

令和3年10月6日に文部科学省によって開催された「不登校に関する調査研究協力者会議(第1回)」の資料の、令和2年12月1日~令和2年12月28日を対象期間とした実態調査の結果から、中学生の「最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ」について順位をつけてご紹介していきます。

「最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ」(中学生)※複数回答可

1位 「身体の不調」       32.6%

2位 「勉強がわからない」    27.6%

3位 「先生のこと」       27.5%

4位 「友達のこと」(いやがらせやいじめ以外)   25.6%

4位 「友達のこと」(いやがらせやいじめがあった) 25.5%

5位 「生活リズムの乱れ」    25.5%

6位 「きっかけが何か自分でもよくわからない」   22.9%

7位 「インターネット、ゲーム、動画視聴、SNS(LINEやTwitterなど)などの影響」 17.3%

8位 「なぜ学校に行かなくてはならないのかが理解できず、行かなくてもいいと思った」 14.6%

9位 「部活動の問題」      13.3%

10位 「1~7(「勉強がわからない」「先生のこと」「友達のこと」など)以外の理由で学校生活と合わなかった」 12.3%

11位 「入学、進級、転校して学校や学級に合わなかった」 10.0%

12位 「学校のきまりなどの問題」 7.8%

13位 「家族関係」        6.2%

14位 「兄弟姉妹や親しい友達の中に、学校を休んでいる人がいて、影響を受けた」 5.9%

15位 「その他」         4.1%

16位 「無回答」         1.9%

17位 「親の学校に対する考え」  1.8%

18位 「特にきっかけはないと思う」1.5%

19位 「家族の世話や家事が忙しかった」1.2%

(参考資料:文部科学省 資料2 (概要)不登校児童生徒の実態調査結果) 

一番多かったきっかけは「身体の不調」でした。

資料には「身体の不調」として(学校に行こうとするとおなかが痛くなったなど)と記載されており、ストレスやプレッシャーなどによる精神的な負担や自律神経系への影響も考えられます。

身体の不調を引き起こすストレスやプレッシャーは、2位の「勉強がわからない」、3位の「先生のこと」、4位の「友達のこと」など学校生活が原因になっている場合もあるでしょう。

さらに勉強がわからないとか、友達とうまくいかないという子どもの中には、学習障害(LD)であったり、注意欠陥多動性障害(ADHD)であることから困難に陥っているケースも考えられます。

また、5位の「生活リズムの乱れ」について、資料には(朝起きられなかったなど)とあり、7位の「インターネット、ゲーム、動画視聴、SNS(LINEやTwitterなど)などの影響」や13位の「家族関係(自分以外の家族どうしの仲が悪かった、家族が失業した、家族が離れ離れになった)」などによる場合も考えられなくはありません。

そのほか、6位の「きっかけが何かわからない」というのも22.9%と高い割合です。

このように「不登校」と定義されている子どもたちのそのきっかけは実に多様で複雑なのです。

<不登校とひきこもり>

「不登校」と並んで社会問題になっているのが「ひきこもり」です。

同じ意味合いで使われることも多いですが、その定義には違いがあります。

「不登校」は文部科学省でしたが、「ひきこもり」では厚生労働省で定義づけられ調査が行われています。

【ひきこもりの定義】

様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6 ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。

なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。

(引用:厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究(H19-こころ-一般-010)」「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」

【不登校とひきこもりの定義の比較】

 

行政機関における定義

要件

対象

期間

不登校

・心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景による欠席

・病気や経済的な理由を除外

小学生

中学生

高校生

 

年間30日以上欠席

ひきこもり

・社会的参加(学校、仕事、家族以外との交流)の回避

・原則、精神障害によるものではないが、その可能性は低くはない

子ども~成人

原則6カ月以上家庭にとどまり続けている

 

不登校では学校に登校しませんが、ひきこもりでは学校だけではなく仕事や家族以外との交流なども回避するとされています。

調査の対象についても不登校は小学生・中学生・高校生が対象となりますが、ひきこもりについては子ども・青年・成人が対象となります。(ひきこもりの調査対象としては15~39歳であったり、20~49歳、40~64歳など、広い年齢層での調査が行われています。)

以上のことから、不登校とひきこもりには共通点がありますが、ひきこもりの定義の対象はより広いことがわかります。

また、例えば不登校の場合、学校には行かないけれどもフリースクールなどの外部の機関には通っているといった子どもたちもその定義に含まれます。

しかし、ひきこもりの定義ではそういったケースは除外されます。

不登校ではほかにも、学校だけでなく外部の機関にも通わず、友達とも交流を断っているというケースもあります。この場合はひきこもりの定義にもあてはまります。

ひきこもりの定義ではコンビニに買い物に行くといった、他者との人間関係の発生しないような外出は除外されるものの、社会的な参加や交流がないことが要件になります。

不登校の定義では社会的参加の有無を問わないので、フリースクールに通ったり、学校以外で友達と遊ぶなど、ひきこもりよりも多様な過ごし方がその定義に含まれます。

不登校とひきこもりはこのように違いはありますが共通する部分もあるので、学生時代の不登校がきっかけになって、大人になってもそのままひきこもりに移行するのでは?という風に思われがちですが、実際にそのようなケースは2割程度にとどまります。

ひきこもりのきっかけとしては、一度社会に出て働いていたものの、仕事や人間関係の問題でうまくいかなかったなどというのが主流になります。

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